グループ2 : 生態関係調査報告 (2002年8月) by 鞠子 茂



グループ2ではモンゴル滞在期間の大半を現地調査に費やしました。 グループ2の研究は草原生態系と人間活動の関係を水と炭素の循環プロセスから評価することを目的としています (詳しくは研究計画研究概念図を参照)。 研究内容から,及川先生と鞠子を中心としたグループと田村先生(恩田先生の研究ともリンク)のグループに分かれています。 今回の調査では,これら二つのグループが取りあえず基本的な調査を行ってきました。

1)調査参加メンバー
植生・土壌グループ(8/7-14):
 鞠子茂(生物科学系),川田清和(農学研究科4年,中村研究室),李吉宰(生命環境科学研究科3年,及川研究室),浦野忠朗(環境科学研究科1年,及川研究室)
土壌グループ(8/9-16):
 田村憲司(応用生物科学系),深野基嗣(環境科学研究科1年,田村研究室),浅野眞希(生命環境科学研究科1年,田村研究室),西川知行(環境科学研究科1年,恩田研究室)

2)調査の内容:
 植生・土壌グループはKherlenbayan Ulaanのサイトで草原の植生構造(構成種や優占度など,写真),植物バイオマス(写真),土壌炭素量,土壌炭素フラックス(写真),群落フラックスなどを調査しました。環境要因として調査期間中の気温や地温の日変化(写真),土壌水分(写真)なども測定いたしました。これらのデータは今後解析を進めていくつもりですが,群落フラックスの調査結果から水のフラックスも明らかになるかもしれません。
 土壌グループでは,KBUとBaganuurの2サイトで,土壌を1 mほど掘り,その理化学的特性を調べました。その結果,50cm以上の深さでは,炭酸カルシウムを主成分とする土壌層の存在が確認されました。さらに詳しいことは今秋に予定している調査で明らかになるかと思います。

3)その他の報告事項
3-1)グレイジング防止フェンスについて
 私たちが調査に入って2日目の8月10日から,KBUサイトでは現地の方々がフェンスを作り始めました(写真1写真2)。作業は手慣れたもので,最初に約3m間隔に50cm位の穴を掘り,そこへ次々と丸太を立てていきました。私たちが現地を去る日には全体の三分の二ほどが丸太で囲まれていました。この後,有刺鉄線を巻いていくようです。
3-2)調査で困った点
 私たちが調査した際に困ったことを三つ挙げておきます。一つは,何といっても日差しです。11:00くらいから15:00位までは日差しが強くて調査には大変厳しい時間帯です。ただ,15:00を過ぎると山の方から雲が流れてきて涼しくなる日が多かった気がします。そうは言っても,日中の調査では,あらかじめなんらかの手段で日陰を確保しておいて,そこで適宜休憩することを進めます。
 もう一つは調査プロットが誰かに壊されたことです(写真)。現地の子供のいたずらだろうということですが,プロットの位置が分かるように張った枠を壊されたり,土壌温度計が引き抜かれたりしました。地元住民に調査のことを充分に理解してもらう必要性を感じました。
 最後はバッタとハエです。時期にもよると思いますが,バッタは歩くとばたばたっと飛び跳ねるくらいたくさんいました。彼らは大変どん欲で,われわれが置いていおいた調査ノートや図鑑を食べてしまいます(写真)。紙だけでなく,ビニール類も食べます。鞄も食べようとしていましたが,さすがにこれは堅く丈夫なので無事でした。現地には,バッタを食べてくれる犬がいますが(写真),何分多勢に無勢ですから,やはり,大事なものは鞄に入れたり,コンテナーに入れておいたりする必要があるでしょう。一方,ハエは日焼け止めのクリームを塗った肌が好みのようで,調査をしているときまとわりついて,それはそれは煩わしいものでした。今のところ,ハエの防御策はなかなかないようです。
3-3)その他
 今回の調査では,植生と土壌を調査いたしましたが,帰国の際に植物の根と土壌を採取して持ち帰る計画でした。ところが,モンゴルからの持ち出しに関する許可が私たちの帰国までに間に合わず,植物防疫所で頂いた日本への持ち込み許可書を使う機会がありませんでした。帰ってから防疫所に問い合わせたところ,3週間前に申請書の変更届を出せば,この許可書がまた使えるそうです。どなたか,この許可書を有効に使っていただける方がおりましたら,私(鞠子)にご連絡いただければお譲りいたします。
 最後に,モンゴルで気づいたこと述べます。それは車の轍が植生を破壊していることです。モンゴルでも徐々にモータリゼーションが発展しているようでが,町から町へ移動するときには整備された道路はないため,草原の上を車が自由に走っていきます。その結果,轍が幾重にもできて,植生を剥いでいきます(写真)。また,地形が斜面である場合には浸食が進んで車の通行が困難なところもありました。そこで,今回の調査予定にはありませんでしたが,試しに轍の植生を調べてみました。解析はこれからですが,本来の草原には見られない草本植物が存在し,周囲とは異なる植生が形成されていることが分かりました。この問題はわれわれのテーマである人間活動の影響に関する問題の一つとして今後取り上げていくべきではないかと考えています。

以上