要旨


モンゴル国ステップにおける土壌の炭酸塩集積過程の解明
−加速器質量分析計を用いた時間要因解析法の検討−
○浅野眞希1)、田村憲司1)、前島勇治2)、松崎浩之3)、木方展治2)、藤原英司2)、東 照雄1) 1)筑波大生命環境、2)(独)農環研、3)東大工学原子力国際
【背景・目的】半乾燥地域における石灰集積作用による炭酸塩の集積過程の解明は、陸上生態系の炭素循環という観点から、近年重要性を増しており、そのタイムスケールを明らかにしていくことが将来予測において必要である。土壌生成における時間要因の解析手法として、加速器質量分析法(AMS法)の発展以降、土壌の年代測定手法として土壌炭酸塩の14C年代測定が試みられてきた。しかし、土壌の14C年代は時間経過に伴う放射壊変のみではなく、炭酸塩の再結晶による炭素交換の影響を受ける。そこで、本研究は、炭酸塩炭素交換の影響および炭素の供給源を明らかにすることを目的とした。
【方法】炭酸塩の垂直分布に差異が認められたモンゴルの森林ステップ、ステップ、ゴビステップにおける土壌の相対年代を10Be年代測定法より算出した。同一土壌断面より得られた粉状の炭酸塩および礫の表面に形成された皮膜状の炭酸塩中の無機炭素を試料として、質量分析法により安定同位体比(δ13C値)、AMS法により放射性同位体比(Δ14C値)の測定を行った。また、炭素供給源として有機炭素の寄与を推定するため各地点における有機炭素のδ13C値の測定を行った。
【結果】10Be年代値を各地点の土壌相対年代として考察した結果、全ての地点でほぼ同時期に土壌生成が開始されたことが示唆された。炭酸塩炭素δ13C値は森林ステップで最も低い値を示した。有機炭素のδ13C値は、植生帯に関わらずほぼ同一の値を示したため、森林ステップでは有機炭素起源の炭素の影響をゴビステップと比較して強く受けていることが示唆された。Δ14C値測定結果から、皮膜状の炭酸塩と比較し粉体状の炭酸塩は高い値を示し、炭酸塩再結晶の影響を受けていることが示された。以上の結果より、炭酸塩集積過程における炭素交換や、有機炭素起源の炭素の動態に関わる時間要因の重要性が強く示された。