要旨


モンゴル国ヘルレン川流域のステップに分布する土壌の諸性質
○浅野 眞希1 ・ 田村 憲司2 ・ 前島 勇治3  川田 清和4 ・ 東 照雄2
(1筑波大生命環境科学研究科, 2筑波大応用生物化学系,3東大原子力総合研究センター, 4筑波大農学研究科)
【はじめに】モンゴル国北東部ヘルレン川流域は植生変遷域であり、草原利用形態の変化・気候的変動によって砂漠化が懸念される地域である。とくに、個々の立地ごとの土壌に関する基礎的データは、このような砂漠化に伴う調査地域生態系の変化予測と対策に不可欠である。そこで、モンゴル国のステップを研究対象地域として、降水量を異にする調査地点を選定し、土壌断面形態の特徴、土壌の化学的・物理的諸性質を明らかにした。
【調査地点】モンゴル国北東部を流れるヘルレン川の中流域から、Baganuur(BGN)、Jagalthaan(JGH)、Kherlenbayan-Ulaan(KBU)、Umderhaan(UDH)、Darhan(DH)の5地点を選定した。標高1361m〜1121m、年降水量約240mm〜130mm、森林ステップからステップへ植生が変遷する地域である。土壌断面調査および植生調査を、2001年8月、2002年6月に行った。植生調査から、全地点でStipa krylovii、Carex sp.、Leymus chinnsisが優占し、降水量が少ない地点ほど草丈が減少し、より乾燥したステップに存在する種が存在した。
【結果および考察】土壌の断面形態観察から、降水量が少ない地点ほど、炭酸塩集積層の存在する深さが、浅くなっていく傾向があった。O層はどの地点でも認められなかった。A層の土色は、BGNのみで黒褐色を示し、JGH以降では暗褐色から褐色を示した。DH、UDHでは漸移層が存在せず、A層直下から炭酸塩集積層となることが認められた。土壌の一般理化学性の分析から本調査地域の土壌は、有機炭素の蓄積量は少なく、高い塩基飽和度をもち、排水性は良好な土壌であった。炭酸塩集積層の存在する深さが表層に近くなるだけでなく、降水量が減少するに従い、下層のpHが上昇し、また、より溶解度の大きな塩類が炭酸塩集積層に増加することが明らかとなった。土壌分類名(WRB)は、UDH以外がCalcic Kastanozems、UDHがCalcic-Hyposodic Kastanozemsとなった。
本研究は独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業 (CREST)における研究課題「北東アジア植生変遷域の水循環と生物・大気圏の相互作用の解明」により行われたものである。