要旨


放射性炭素年代測定法によるカスタノーゼム炭酸塩集積層の生成速度について
浅野 眞希1・田村 憲司1・前島 勇治2・松崎 浩之3・東 照雄1
(1筑波大生命環境科学研究科, 2(独)農業環境技術研究所, 3東大原子力総合研究センター)
【背景および目的】乾燥・半乾燥気候下において、石灰集積作用によって生成した炭酸塩の集積部位の深さや形態に関する既存研究は古くから存在するが、その生成時間に関する研究は極めて少ない。そこで、本研究では、カスタノーゼム炭酸塩集積層の放射性炭素同位体比(14C)を求めることにより、炭酸塩集積層の生成速度を考察した。そして、半乾燥地域の土壌において炭酸塩集積層生成速 度の解明に対する、放射性炭素年代測定法の有効性を検討した。
【試料および方法】モンゴル国北東部に位置する、ヘルレン川流域ステップより、Baganuur、Jagalthan、Kherlenbayan-Ulaan、Underhan、Darhanの5地点のCalcic-Kastanozems(WRB)の炭酸塩集積層を供試試料とした。調査地域は植生変遷域であり、5地点は降水量および植生を異にする気候系列である。各試料は、東京大学原子力総合研究センター、タンデム加速器研究部門において、85%リン酸処理により炭酸塩のみを二酸化炭素として捕集し、グラファイト試料処理を行い、14Cを5MVタンデム加速器をもちいて加速器質量分析(AMS)により測定し、14Cを算出した。
【結果】各試料の14C値は、−460〜−776‰の範囲を示し、4地点において、集積層の下部ほど14C値は小さい値を示した。また、14C値は土壌中の炭酸塩存在量と相関があることが明らかとなった。また、気候系列に従い、降水量の多い地点では、集積層の上部で14C値が小さくなる傾向を示した。以上の結果および炭酸塩集積層の塩類組成、炭素安定同位体比とあわせて炭酸塩集積層の生成時間について考察を行った。  本研究は独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)における課題研究「北東アジア植生変遷域の水循環と生物・大気圏の相互作用の解明」により行われたものである。