要旨


モンゴル国の草原生態系回復過程における群落構造と土壌理化学性
烏云娜1),田村憲司2),○浅野眞希2),東 照雄2)
1)内蒙古大学生態・環境科学系,2)筑波大学生命環境科学研究科

【背景および目的】
 中央アジア東部の内陸地域に位置するモンゴル国は半乾燥気候に属し、気候変動による乾燥化の影響を受ける可能性が高い地域である。また、1991年からの経済改革開放政策による市場経済化の後、農牧業の形態に変化が生じ草原生態系への影響が問題となっており、砂漠化地域が国土の41.3%を占め拡大傾向にあることが報告されている(モンゴル自然環境部荒漠化防止委員会 2000)。そのため、気候変動および牧畜業が草原生態系に及ぼす影響の解明が求められている。そこで、本研究は、放牧が草原生態系に与える影響を明らかにすることを目的とし、モンゴル国のステップに設けた保護柵内と放牧が行われている草原を調査対象地として、植生変動解析および土壌理化学性の分析を行った。
【調査地点および方法】
モンゴル国ヘンティー県Kherlenbayan-Ulaan(KBU)に2002年に設置された保護柵内(禁牧区)と隣接する放牧が行われている草原(放牧区)を調査対象地点とした。枠法(1m×1m)で植生調査を行い、群落の種組成、草丈(平均値と最高値)、密度および地上部バイオマスを測定した。植生調査と同地点において表層土壌試料(深度0-5cm)を採取した。生土試料を用いて土壌酵素活性(β―グルコシダーゼ法)、風乾土壌試料および不撹乱コア試料(100mL)を用いて一般理化学性を測定した。また、Path-Row=130-27のLandsat Thematic Mapper(TM)データ(2005年6月24日観測)を用いて、クラスタ法(ISODATA法)で分類し、土地利用と土地被覆の広域把握を行った。
【結果および考察】
植生調査の結果、禁牧区と放牧区では群落の優占種が顕著に異なっていた。禁牧区でイネ科、キク科、マメ科が増加し、多年生の草本および低木の種類が増加した。禁牧区では放牧区と比較して群落の地上部現存量、種多様性指数、拡張指数が顕著に増加し、草原植物の科組成と生活型の変化を組み合わせることにより、草原の回復段階を評価できることが示唆された。土壌酵素活性の分析結果は禁牧区で放牧区よりも高い値を示した。土壌容積重はいずれも放牧区において高い値を示した。衛星画像データから土地利用と土地被覆を解析した結果、広域に分布する植生タイプは主に降水量分布と対応しているが、調査地域周辺はNDVIが低くバイオマスが低いことが示された。