要旨


耕作および放牧が草原土壌の諸性質に及ぼす影響
〜モンゴル国ヘンティ県における事例〜
○星野 亜季、田村 憲司、藤巻 晴行、浅野 真希、東 照雄
筑波大学大学院生命環境科学研究科

【目的】 モンゴル国では、近年、家畜数の増加に伴う過放牧により草原の裸地化や植物種数の変化、それに伴う土壌の荒廃が問題となっている。一方、1960年代から開墾が進み、1990年以降そのほとんどが放棄され、耕作放棄地における種組成変化が問題となっている。調査地の植生は土壌水分に強く依存することが明らかとなっており(浦野, 2003)、土壌水分は土壌構構造、時に土壌の微細な孔隙に規定されている(岡島, 1989)そこで、本研究の目的は、土地利用履歴の異なる地点間における土壌の理化学性と微細形態的特徴を明らかにすることとした。
【方法】 年平均降水量が約180mmのヘンティ県において、2002年に柵を設置し、放牧圧を排除した保護柵内(Site 1 2002年設置)、放牧を行っている自然草原(Site 2)、1962年から1992年まで灌漑により牧草や小麦を生産し、その後、放棄された耕作放棄地(Site 3)、さらに、耕作放棄地に隣接した耕作地(Site 4)の4地点を調査地とした。各地点に20m×20mの枠を設置し、表層土壌0−5cmの物理性測定用コアサンプル、化学分析用サンプルをそれぞれ16点、微細形態用コアサンプルを5点採取し、分析に供試した。また、枠法による植生調査を各地点において5点行った。
【結果および考察】 Site 1ではイネ科の優占度が高く、一方、Site 2では、イネ科とカヤツリグサ科が同程度優占していた。Site 3および 4では、植生は殆んど認められなかった。また、全炭素量はSite 2が最も多く、次いでSite 1、3、4の順に多かった。水分移動特性の測定結果から算出した有効水分量は、Site 2が最も多く、次いで、Site 1、3、4の順に大きな値を示し、Site 1および2において孔隙径1-100μmの孔隙がSite 3および4よりも多かった。微細形態の観察結果から、Site 1および2では、粒団がいくつも連なり、孔隙径数十μmの孔隙が存在していた。一方、Site 3および4では、一次鉱物からなる粗粒質物質の割合が多く、微細団粒からなる細粒質物質の割合が低かった。しかし、Site 3では、数個の粒子が繋がっている粗大な構造が確認されたが、現在も耕作を行っているSite 4では、粗大な粗粒質物質が密に分布している間に単一粒子がまばらに存在していた。Site 1および2では草原植生下で土壌構造が維持されているが、Site 3および4では耕作による土壌の撹乱の影響を反映していると考えられた。耕作放棄後12年経過したSite 3は、Site 4と比較して土壌構造の回復が起こっていることが示唆された。また、Site 1において、植生調査より、牧による植被率の増加、種組成の変化は確認されたが、土壌構造において、Site 2と比較して顕著な違いは確認されなかった。